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          The Legal Mind Education Of Japan

活動報告report


「いろいろな学びができるポリスミュージアム」


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 日本法育学会は、令和6年(2024年)3月19日(火)に、ポリスミュージアム(警察博物館)見学会を行いました。
 ポリスミュージアムは、6階建てで、各階ごとにテーマがわかりやすく設定されており、また、展示内容は非常に充実したものになっていました。
 パトカーなどの実物が展示されており、白バイとヘリコプターは乗ってみることができますので、幼児でも楽しむことができます。また、110番通報体験、犯罪捜査体験、交番体験、制服紹介、警察犬紹介など、小学校の児童や、中学・高校の生徒が楽しく学べるものがありました。そのほか、歴史展示は、大学生や研究者が、警視庁の歴史や事件の歴史などを詳しく知ることができるものになっていました。パンフレットも、各世代に合わせたものが用意されていました。
 このようにポリスミュージアムは、各世代により違った学び方が出来ますが、加えて、日本橋と銀座との間の京橋と、非常に立地がよいこともありますので、近いうちに再度訪れて、より深く学びたいと思いました。



「新たな形の全国矯正展」


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 令和5年(2023年)12月9日(土)・10日(日)、第63回全国矯正展が行われましたが、日本法育学会では、12月10日(日)に全国矯正展見学会を行いました。
活動報告写真 今回の全国矯正展は、東京国際フォーラムで行われました。会場が広いにもかかわらず、会場全体が見渡せるため、迷うことはないようです。また、会場の中央にステージが設けられて、度々催しが行われていたりしました。参加者の中には、網走監獄弁当や横浜刑務所パスタを昼食としていた者もいました。そのほか、法務省、警視庁、自衛隊の車両の展示があったりして、単なる刑務所作業品展示即売会にとどまらなず、いつまでも見ていることのできる矯正展になっていました。
活動報告写真 法育との関連で興味深かった展示がいくつかありました。1つは、懲役刑と禁錮刑に代わって拘禁刑が創設されることに伴い刑務所でも準備が進められていることでした。つまり、拘禁刑の創設は、単に懲役刑と禁錮刑とが一本化されるだけでなく、刑務作業にとどまらない受刑者への幅広い対応が刑務所に求められるということです。
 また、少年院100周年の展示で出院者のインタビュービデオが放映されていたことも、興味深い展示でした。インタビューされていた出院者は、入院前、自身が社会で必要とされていないと思っていたそうですが、少年院で自身の存在意義を教えられた結果、現在では出院者の支援をする仕事をしているとのことでした。
 日本法育学会では、今後もこうした見学会などを通じて、社会を知る活動をしてまいります。



「横浜税関見学会 税金・薬物・知的財産などを新たな角度からみる」


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活動報告写真 2023年3月18日(土)に、横浜税関見学会を行いました。
 税関資料展示を通じ、税関の歴史、税関の仕事、横浜港、貿易、関税法、密輸問題などを勉強することが主な目的でしたが、当日は、税関庁舎の公開がされていましたので、先に税関庁舎を見学することにしました。
 音楽隊の演奏を鑑賞したのち、貴賓室、マッカーサーも執務したという旧税関長室などを見学していきました。その途中で、普段は見ることのできない窓から「クイーンの塔」を見ることができました。

活動報告写真  また、麻薬探知犬デモンストレーションを見ました。麻薬探知犬は、巻いたタオルを見つける訓練をしたのち、麻薬とタオルを箱に入れて訓練することで、麻薬の匂いを関連づけるようになるそうで、犬にとっては「遊んでもらえる」と思わせているそうです。
活動報告写真  そして、今回の主目的である税関資料展示室を見学しました。
 今年度は、税関150年という記念の年であることもあり、展示室は、歴史展示が強化されていました。特に、明治維新を研究する参加者は、開国、横浜港の開港、運上所から税関へといった展示や、江戸から明治にかけての条約や法令の展示に興味を示していました。今や有名な観光地である赤レンガ倉庫も、もとは保税倉庫だったのだそうです。
 活動報告写真参加者が特に関心を持った展示は、偽ブランド品などの知的財産侵害品でした。本物と偽物が並べられた展示は、「どちらが本物か分からない」という声があがりました。「個人で使うのだからいい」わけではないのは当然ですが、偽物と気付かずに偽物を使っていた可能性があることに怖くなってしまった参加者もいました。
 また、ワシントン条約にも関心が集まりました。参加者からは、「実家に鳥のはく製があるけど、よく調べて買わないといけない」という声もあがりました。
 活動報告写真 これまで、日本法育学会では、麻薬・覚せい剤事件や偽ブランド品販売事件の裁判傍聴をしたり、刑務所見学などを通じて麻薬・覚せい剤使用者の更生について学んだりしてきました。今回の税関見学で、国の出入口である港という、また別の側面からこれらの問題について見ることができたのは、大きな成果であったと思います。




「裁判傍聴 技能実習生の窃盗事件 被害者は同僚の技能実習生」


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 2023年1月13日(金)に、千葉地裁にて裁判傍聴を行いました。理由は不明ですが、当日は、多くの裁判がありました。麻薬や覚せい剤の事件が多かったようですので、外国との往来が再び活発になった成田空港関連の事件が多いのでしょうか。それでも、コロナ禍が完全に明けたわけではありませんので、密を避けるため、参加者は各自興味のある裁判を傍聴することにしました。
 ここでは、外国人技能実習生の窃盗事件について紹介します。事件自体は単純で、外国人技能実習生が、同じ国の同僚の技能実習生の財布を盗み、財布の中に入っていたキャッシュカードを使って、ATMで現金を引き出したというものです。
 法廷通訳人を介して通訳がされながらの裁判でしたので、ゆっくりと、しかしわかりやすく裁判が進みました。被告人の技能実習生も、窃盗の事実自体を認めていましたので、新件の裁判でありながら、判決まで出ました。判決は執行猶予付きの懲役刑でした。
 ある意味、外国社会をそのまま日本に持ち込んだ形の犯罪でしたので、「はたしてこれを日本で裁くことに意味があるのか」という疑問を持った参加者もいましたが、その一方で、「日本が外国人を技能実習生として受け入れているのだから、やはり日本が最後まで面倒を見るべきだ」という意見も参加者から出てきました。
 以前にも外国人犯罪の裁判傍聴をしたことがありますが、たとえ事件自体が単純でも、その背景にある社会的な問題は深いことを実感させられました。




「裁判傍聴 高齢者の犯罪にどうすべきか」


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 2022年10月28日(金)に、千葉地裁にて裁判傍聴を行いました。傍聴した事件は、高齢の被告人が、パチンコ店の喫煙所で起こした傷害事件でした。
 事件は次のとおりです。被告人は客としてパチンコ店に入り、パチンコ店の喫煙所にある電源にパソコンをつなぎ、ワンセグテレビ番組を見ていました。ところが被告人は、喫煙所に入ってきた別の客がうるさく喋っていることに怒り、顔などを殴るなどして、その客に傷害を負わせました。
 事件としては単純なもので、被告人も事実を認めており、証人尋問などもありませんでした。ただ、被告人には傷害の前科があり、執行猶予中でした。また、弁護人や検察官の「はい」か「いいえ」の返答を求める質問にまともに答えられず、あれやこれやの言い訳を繰り返すだけでした。
 裁判傍聴後、参加者からは、「傷害事件の執行猶予中に起こした傷害事件だから、実刑判決が出るだろう」、「執行猶予にしたらまた同じことを起こすだろう」、「でも、高齢だから実刑にしていいのか」、「何らかの医療的な措置はとれないのか」などの意見が出ました。
 今回の裁判傍聴を通じて、高齢化社会の問題の一端を垣間見ることができました。




「裁判傍聴 教育的裁判」


 2022年9月30日(金)に、千葉地裁にて裁判傍聴を行いました。傍聴事件は、覚せい剤事件、特定少年恐喝事件、出入国管理法違反事件、窃盗累犯事件の4件です。
 どの事件も、成育環境や友人関係の問題が見え隠れし、家族が必死に被告人を支えようとしている姿が印象的でした。
 何より驚いたのは、裁判長も検察官も被告人に対して、とても親身になって更生を促していることでした。特に、特定少年に対しては、裁判長が柔らかい言葉で丁寧に話かけることで、自分のこれまでの生活を反省する気持ちを引き出しました。累犯窃盗事件では、鬱病で窃盗を繰り返す娘を「見捨てない」と語ったやつれた母親と被告人に、検察官は身を乗り出して諭すように話しかけていました。
 これまで見てきた法曹が優越的立場で追い詰めるような裁判とは全く違う「教育的裁判」でした。見ている私たちも、被告人の様子から、これなら再犯しないだろうと執行猶予の意義を強く感じました。
 



「裁判傍聴 被告人の立場だったら」


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 2022年8月3日(水)に東京地方裁判所で裁判傍聴をいたしました。参加者は、中学生・教員・弁護士等、総勢約40名です。コロナ禍でも幸い座席数制限がなく全員が希望した法廷に入ることができ、席から乗り出して真剣にメモを取る中学生の姿が印象的でした。
 交通違反を繰り返し刑事裁判の法廷で裁かれることになった人、執行猶予中に万引きした人、アパートの上層階の生活音に耐えられず暴行してしまった人などが被告人で、傍聴終了後の確認会では、被告人の発言の矛盾に気づくだけでなく、なぜ被告人は罪を犯してしまったのか、自分がその立場だったらどうだろうかと被告人の状況を自己投影し、自らの行動を振り返っていました。
 「百聞は一見に如かず」裁判を見ることで、他者を通した論理的思考ができたことがお土産です。
 



「コロナ禍の全国矯正展」


活動報告写真  日本法育学会では、これまで、刑務所等でどのようなことが行われているかを知るために、刑務所見学会や矯正展見学会などを実施してまいりました。ところが、コロナ禍で残念ながら、全国矯正展をはじめとした矯正展(刑務所作業品展示即売会)がしばらく開催されませんでした。このところ感染状況が落ち着きを見せたため、3年ぶりに全国矯正展が開催されることになりましたので、刑務所等についての勉強をするべく、全国矯正展見学会を実施しました。
 入場に事前登録を必要としたり、会計はレジコーナーでまとめてしたりする等、感染症対策のために例年とはだいぶ様子の異なる全国矯正展でした。それでも、3年ぶりの開催ということもあり、刑務所作業品審査会の製品には来場者の興味をひくものが多数展示されていました。また、「マル獄」などの定番人気製品のほか、各刑務所の新作製品にも安くて品質のよいものが沢山あり、参加された会員の中には、ついつい買いすぎてしまったという方もおりました。
 刑務作業についての広報展示は、レジコーナーで会計を済ませたあとにありましたので、広報展示もゆっくり見ることができました。今回の全国矯正展のテーマは「社会に支えられ貢献する刑務作業~コロナ禍の中で~」ですが、コロナ禍で刑務作業の受注が激減した中、どのようにして刑務作業を社会に貢献していくべきかが課題になったそうです。そんな中、医療機関で医療用ガウンなどが不足していることから、全国の刑務所で医療用ガウンを縫製したとのことです。そして、医療関係者から感謝・激励されたことが、受刑者の社会復帰へのやりがいにつながったということだそうです。この広報展示をゆっくり見ることができたのは、今回の全国矯正展見学会の成果といえます。
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 なお、全国矯正展からの帰りの九段坂で、「そういえば、全国矯正展には何度か来ても、科学技術館自体見たことがない」などという話題になりました。全国矯正展の会場である科学技術館の周りには、様々な博物館等があります。そこで、一部の会員の方で、九段坂にある昭和館にも入ってみることにしました。ウクライナ問題などのこともあり、戦争と平和について考えさせられます。日本法育学会でも、こうした博物館等の見学会を設けるなどして、改めて平和のこと、歴史のことを考える機会をつくりたいと思います。
 



「裁判傍聴 盗撮と精神疾患」


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 新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株が猛威をふるったため、再び研究会ができなくなりましたが、感染状況が落ち着いてきましたので、活動を再開しました。
 今回は、千葉地方裁判所で裁判傍聴をしました。当日は、裁判員裁判のほか、覚せい剤使用事件、道路交通法違反事件、迷惑防止条例違反事件など、さまざまな裁判がありましたので、参加者が各自興味のある裁判の傍聴をして、密を避けました。
 ここでは、迷惑防止条例違反事件について紹介します。被告人は、運動公園の女子トイレに繰り返し侵入し、携帯電話で盗撮をしたため、建造物侵入と迷惑防止条例違反に問われました。被告人は、それらを認めています。
 被告人によれば、動機は、「高校時代に未練があった」とか、「風景を見るように、かわいい女子を見ていたい」といったことのようです。ただ、それだけであれば、女子を運動公園で眺めているだけで十分であり、盗撮する必要はないはずです。
 裁判で明らかになったこととして、被告人は、広汎性発達障害や注意欠如多動症(ADHD)という精神疾患を抱えており、それが盗撮という行動に結びついているようです。そして、被告人は現在、治療を受けるとともに、いくつかの障害者支援を受けているようです。
 薬物使用や常習窃盗などが精神疾患と関連していることはよく知られていますが、盗撮などと精神疾患とが関連することがあることを知ることができたのは、裁判傍聴をした成果といえます。
 



「裁判傍聴 偽ブランド品の犯罪と法廷通訳人」


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 コロナ禍で研究会ができずにいましたが、感染症対策をとりながら活動を再開することとしました。
 まずは、千葉地方裁判所で裁判傍聴をしました。道路交通法違反事件、迷惑防止条例違反事件、商標法違反事件と、参加者が各自興味のある裁判の傍聴をすることで、密を避けることにしました。
 ここでは、商標法違反事件について紹介します。外国人である被告人は、日本人の名前を名乗り、東京都内の貸倉庫で、偽ブランド腕時計のネット通信販売の準備をしていたという事件です。事件としては単純で、被告人も罪を認めていましたが、偽ブランド腕時計だけでなく偽ブランドかばんも販売準備をしていたため、後日訴因変更をして裁判が行われることになりました。
 なお、日本語が話せない被告人のために、法廷通訳人が通訳をしていましたが、何度か裁判傍聴をしたことがある方でも、実際に法廷通訳人の活躍を見るのは初めてだということだそうです。
 コロナ前の日本は、外国人留学生や技能実習生を増やしてきました。現在コロナ禍で外国人の入国が制限されていますが、その一方で、被告人のように、入国してから年数を経ているのに、日本社会に馴染めず犯罪に手を染める外国人がいることも事実です。外国人をどのように受け入れていくかは、コロナ前から続く日本の課題であるといえるでしょう。
 



「府中刑務所参観 多様な矯正」


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活動報告写真 2020年2月12日(火)府中刑務所を参観しました。
 まずスライドを使って府中刑務所の歴史や特徴や犯罪状況などについてレクチャーを受けました。続いて、受刑者居住地内へ。規律遵守やトラブル回避のために考えられたしくみができていました。中でも印象的だったのが、年齢、国籍、文化や宗教などに配慮した処遇がなされていたこと。はじめは驚きましたが、様々な事例や可能性について説明を受け、そのような処遇の必要性と重要性を感じました。
 そして担当刑務官の方のお話や態度からは、厳しさだけでなく受刑者を見守る温かさを感じました。
 過ちて改めざる是を過ちという。
 更生を願うばかりです。



「裁判傍聴 盗んだのは現金だけか」


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 中央学院大学大久保ゼミナールとの共催で、千葉地方裁判所で裁判傍聴をしました。
 事件は、大学生である被告人が、ネットカフェで他の客の物を盗んだというものでした。これだけであれば、よくある窃盗事件ですが、盗んだ物が現金だけなのか、それとも、カバンやクレジットカードなども盗んだのかという点が争点となりました。
 裁判傍聴後、以下のような意見がゼミ生から出てきて、ゼミ生と同世代の被告人の事件を考えさせられました。
 ・被告人・弁護人の言っていることは正しいのか。
 ・他の物は盗んでいないということを証明するのは難しいのではないか。
 ・仮に、盗んだ物が現金だけということが証明できれば、刑が軽くなる可能性がある。
 ・音楽やゲームアプリを買うことを考えると、現金よりもむしろクレジットカードを狙ったのではないか。
 ・そもそも大学生がなぜ盗みをしたのか。
 ・友人はいないのか。ゼミやサークルには入っているのか。
 ・今後、大学にいることができるのだろうか。



「国会・憲政記念館見学会」


 国会・憲政記念館見学会を行いました。
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 まずは、衆議院を見学しました。見学時は国会が閉会中であり、また、他の団体の見学と被らなかったため、丁寧な案内をいただきました。衆議院と参議院との本会議場の違いや、中央広間の3つの銅像と空の台座の意味、天皇の御休所の装飾のこと、大きな本会議場でも演説(だけでなくヤジ)がよく聞こえる仕組み、ほぼ国産材料で造られた議事堂に使用されている数少ない外国産材料のことなど、国会中継を見ただけではわからないことがよくわかりました。
活動報告写真 続いて、憲政記念館を見学しました。歴代の国会議事堂のこと、尾崎行雄をはじめとした憲政にかかわる人々のことなどの展示があり、私たちが学んだ日本の歴史を少し違った観点から見ることができました。特に、見学会時は「尾崎行雄没後65年」の特別展をしており、有名な桂太郎弾劾演説の絵などの展示もありました。憲政記念館は、間もなく新しい施設に移転するとのことです。新施設完成の折には、再び訪れることができればと考えております。



埼玉大学70周年記念事業
「もっと知ろう!裁判員裁判―裁判員裁判10周年の成果と課題―」


 埼玉大の2年生、3年生の学生を法育学会が指導して、「西町駅ホーム転落死事件」の模擬裁判員裁判を実施しました。
 当日は、さいたま地方裁判所の裁判官が裁判長役を務め、学生たちは、論理的根拠を示して、明確に自分の意見を述べていました。裁判官は、とてもソフトな雰囲気の方で、法律的な説明もわかりやすく、公平に意見を聞き、意見を整理して下さるので、脚本のない評議の場面も、スムーズに進みました。 評決は、正当防衛が認められて無罪。終了後の学生たちの、達成感に満ちた表情が印象的でした。
 質疑では、模擬裁判の内容についてだけでなく、裁判員裁判の辞退者が増えている理由を詳細に分析すべき、対象事件の変更が必要ではないか、感情面をどのようにコントロールすればよいのかなど、貴重なご意見をいただきました。
 司法の民主化のために、70年の歴史がある検察審査会制度に遅れて、10年前に始まった裁判員制度は、まだ歩き始めたばかりです。裁判所は、市民感覚に寄り添うために様々な努力をされていますが、市民の関心が薄れないようにその理念と目的をより明確に広報すべきでしょう。そして市民は、論理的に考えた意見を遠慮せず明確に伝える訓練を重ねる必要があります。それは、一朝一夕では身につきません。幼い頃から繰り返し経験することが重要です。さあ、家庭から議論の練習を始めましょう。
 なお、当日の様子の写真は、読売新聞埼玉版に掲載されています。



「中央学院大学あびこ祭で模擬裁判」

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 中央学院大学大久保ゼミナール2年生たちに対し日本法育学会が演技指導をして、中央学院大学あびこ祭で「西町駅ホーム転落死事件」の模擬裁判員裁判を行いました。
 当日は、日本法育学会会員の皆さまや大久保ゼミナール4年生も役に就き、また、傍聴席から裁判員役を選出して、模擬裁判員裁判を行いました。前日までの練習では、検察官役や弁護人役、証人役などをうまく演ずることのできなかったゼミ生でしたが、模擬裁判員裁判本番では見違えるほどの成長を見せました。
 評議では、法律について全くの素人である一般の方や、法学を勉強し始めたばかりの1年生を含め、活発な議論がなされました。その結果、被告人の行為は傷害致死罪ではなく暴行罪の構成要件に該当するとしながらも、正当防衛が成立するとして、被告人は無罪となりました。
 中央学院大学には立派な模擬法廷があり、元法学部長の齊藤信宰先生を中心にあびこ祭などで模擬裁判をしてきましたが、ここ数年、あびこ祭などで模擬裁判ができずにいました。今回の模擬裁判員裁判が、法育の広がりにつながればと願っております。



「主体的思考力を伸ばす模擬裁判」

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 千代田区立麴町中学校3年生の指導は今年で11年目になります。火曜日と木曜日の放課後の1時間を使って、話し合い・練習を5回行い、9月27日の午後1時から、2、3年生の生徒と保護者の皆様に公開致しました。今回の模擬裁判員裁判で最も伸ばしたかった力は、「主体的思考力」です。用意したシナリオは公判の部分だけで、質問事項や評議の場面については、全て自分たちで考えています。また、昨年まで、先生方が準備し、動かしていた「パワーポイント」や「照明」、「マイク」なども、全て生徒たちが運営しました。
 今年の模擬裁判員裁判『ハンマー殺人未遂事件』は、2017年に品川であった事件を日本法育学会理事長の平野が全て傍聴してシナリオを作成しました。争点は、責任能力と殺意です。凶器、頭蓋骨模型などを用意し書画カメラで映しながら証人らが動作すること、検察官・弁護人・被告人の主張を要約した内容などを大型スクリーンに映すなど、傍聴者が視覚的に理解しやすい工夫をしました。
 生徒たちは、初めての体験で最初は戸惑いもありましたが、より良い方法を次々と提案してきて、積極的に改善していきました。自主的に練習を重ねたり、発言方法を工夫したりして、日増しに成長していく姿に目を見張りました。彼ら人生の糧にしてくれることを期待します。



「東京拘置所矯正展見学会で職業体験」

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 中央学院大学大久保ゼミナールと共催で東京拘置所矯正展見学会を行いました。
 矯正展は、刑務所作業品の展示即売会ですが、東京拘置所矯正展は地域密着の矯正展であり、また、公務員志望の学生たちが中心の見学会でしたので、刑務官などのほか、警察官、消防官、自衛官などの職業体験を中心に見学をしました。学生たちの中には、これをきっかけに、今後のインターンシップやイベント参加の予約を入れた者もいるようです。



「覚せい剤使用事件の裁判傍聴」

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 中央学院大学法制研究室との共催で、千葉地方裁判所にて裁判傍聴を行いました。
 千葉地方裁判所は、管轄内に成田空港があり、覚せい剤や薬物の事件が多いという特徴があります。傍聴した裁判は、覚せい剤使用事件の証人尋問手続きで、「ダルク」の職員が証人尋問に応じていました。
 裁判傍聴後、船山泰範弁護士による解説がありました。「ダルク」が薬物依存から立ち直るための施設であることや、有罪・無罪だけでなく執行猶予判決を得ることもまた弁護人の役割であることなどの説明がされました。
 なお、傍聴できなかった学生もいましたが、その学生たちば、後日改めて千葉地方裁判所で不法入国・就労事件の裁判を傍聴し、起訴から判決まで一連の裁判の流れを見ました。千葉地方裁判所で不法入国事件が多いもまた、裁判管轄内に成田空港があるためです。法廷通訳という仕事があること、各国間の経済格差が不法就労問題を引き起こしていること、ブローカーにだまされてしまった被告人に対して何ができるか等、いろいろ考えさせられるものがありました。



「累犯窃盗事件の裁判傍聴」

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 東京地方裁判所にて、他団体や学生・生徒の皆さんと、累犯窃盗事件の裁判傍聴を行いました。
 今回の事件は、被告人は、所持金が500円もないのに、スーパーで1,000円ちょっとの食品類を盗んだというもので、事件自体は小さなものでした。しかし、被告人は、小学生時代のいじめが原因で精神病となったのをきっかけに、50代の現在まで窃盗を繰り返し前科9犯となりました。
 このように、病的に窃盗を繰り返す者に対して、社会はどのようなことができるかを考えさせられる事件でした。特に、学生・生徒の皆さんにとって、いじめによる孤独がもたらす結果の一つや、犯罪者の福祉的更生を考えるいい機会だったのではないかと思われます。
 なお、裁判傍聴後、船山泰範弁護士による解説が行われましたが、船山弁護士によれば、「弁護人は被告人の心神喪失・心神耗弱を主張することもできたのではないか」とのことでした。



「足立区立第四中学校(夜間中学)参観」

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 足立区立第四中学校(夜間中学)を参観しました。
 日本大学文理学部教育学科の学生・大学院生も参加し、次のようなたくさんの驚きと発見がありました。
1 生徒の80%が外国人であること
2 日本語教育に重点が置かれていること 
3 生涯学習として、中学未就学者だけでなく幅広い年代の方が学んでいること
4 とても学習意欲が高いこと
5 習熟度別少人数クラスで、きめ細やかな指導がされていること

 校長先生や副校長先生から、たいへんご丁寧にご説明いただき、授業参観もさせていただいたので、その素晴らしさを肌で感じることができました。
 参観した大学院生からは、「地域性があるのではないか」という感想もあり、今後もいくつかの夜間中学校を参観していこうと思います。



「裁判傍聴 なぜ被告人は犯罪をしてしまったか」

 中央学院大学大久保ゼミナールとの共催で裁判傍聴をしました。
 邸宅侵入・窃盗事件の継続審理事件を傍聴しましたが、追起訴から結審まで、ほぼ一連の刑事事件の流れを見ることができました。
 被告人は、学生たちと同世代ですが、父親の下で働いていたところ、仕事に耐えられなくなって父親の下を飛び出したため、住むところもお金もなく、家に侵入して物を盗んでしまいました。被告人には複雑な家庭の事情があったようですが、それでもなお、「同世代の被告人がなぜ犯罪をしてしまったのか」、「犯罪をしなくて済む方法は本当になかったのか」と、学生たちに問いかけるものがあったようです。
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活動報告
2018年の活動報告
2017年までの活動報告


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